スタンダードなもの

夏の暑い時期は、象印の水筒を職場に持って行きます。中身は麦茶を入れていきます。朝8時に麦茶と一緒に氷を入れておけば、仕事から帰ってくる午後6時ころまで冷たい麦茶を楽しめます。麦茶は伊藤園の54袋入りで150円と安く売っているものです。1袋で1リットルの麦茶を作れるので、54リットル分になります。コストパフォーマンスの良い麦茶です。

 

この麦茶を好んで使っているのは、値段が安いということに加え、全国どこでも手に入るスタンダードな商品だからです。「全国どこでも」というのがポイントです。引っ越しをして遠くに移住することになっても、スーパーに行けば手に入ります。日用品として「入手しやすい」という優れた特徴をもっています。

 

逆に、私のように入手しやすいものではなく、入手しにくいものを好きになると大変です。特に、ある地域でしか手に入らないものを好きになってしまい、その商品でなければ満足できなくなってしまうと、とても不便になります。その商品を手に入れるため、わざわざ遠くに買いに行ったり、取り寄せたりする手間がかかるからです。

私は変わったものを好きになりやすい性格で、欲しいものが手に入りづらくて困るという経験がたびたびあります。せめて日常の飲み物くらいはそういう気苦労をせずに手に入れたい。だからスタンダードな伊藤園の麦茶を愛飲しています。

 

ビールに対しても同じ考えをもっています。普段飲むのはスタンダードなビールばかりで、限定醸造ビール、地域限定ビールというのには手を出さないようにしています。価格が高いというのもありますが、一番の理由はせっかく気に入った味のビールに巡り合えたとしても、そのビールが手に入らなくなる可能性があるからです。気に入ったもの、高い頻度で使うものは手に入れやすいのが一番です。手に入らなくなっても美味しかったという思い出が残ればいいじゃないか。そう考える人もいるかと思います。むしろ、そういうポジティブな人が多いかと思います。しかし、私はネガティブに考えてしまいます。一度気に入ったビールが販売休止になってしまうと、「どこを探してもあの味はもうないのだ」という喪失感を感じてしまうのです。だから、私はキリンビール一番搾りやラガー、サッポロビールのエビスビールなどを好んで飲みます。どこのスーパーやコンビニに行っても置いてあるスタンダードなビールが好きです。スタンダードなビールは遠方の出張先であっても手に入ります。「出張先で一仕事をやっと終えた。でも疲れたから人混みの中に行ってまで外食はしたくない。宿の部屋に早く戻ってゆっくりしたい。コンビニに寄ってビールとつまみを買って部屋でゆっくりしよう。」そういうときでも必ず手に入るビールです。 

 

スタンダードなものの良さについて書きましたが、スタンダードに固執せず、スタンダードなものと特殊なものの両方をよく見るという視点が大事だと思っています。

 

他の人間が知らない珍しいもの、特殊なものばかりを語って通ぶっている人がいます。こういう人は本当に「珍しいもの」「特殊なもの」を理解しているのでしょうか。私は「通ぶっている可能性のある人」、特に一方的に自分の知識をひけらかすような人と出会うと必ず質問をしてみます。「それってスタンダードな〇〇と比べてどう違うのですか?」。この質問をすると「見せかけの通」と「本当の通」が分かります。

 

「見せかけの通」はスタンダードなものと自分の語っている特殊なものとの違いをうまく説明できません。しどろもどろになったり、何度も質問しなければ理解できない説明をしたりします。スタンダードなものをよく知らずに、「通っぽいから」「上級者っぽいから」という表面的な理由で特殊なものに手を出しているから違いが分からない、説明ができないのです。

 

一方、「本当の通」は両者の違いを説明できます。違いを説明できるだけでなく、こういう言い方をします。「どちらにもメリット、デメリットがあってどちらも良いものだけど、自分はこういう点が好きだからスタンダードor特殊な方が好きだ」。「本当の通」は比較という視点を持っています。両者を知ってよく知っているから両者について説明できる。それに、スタンダードなものはダメだ、特殊なものはダメだという一方的な言い方をしません。両者ともに良いところがあるから世の中に残っていることをよく理解しているからです。

 

スタンダードなものだけ、特殊なものだけにこだわらないよう広い視野を持つよう気を付けたいものです。