布の便利な使い方

他人と共有するスペースは散らかりやすい。たとえば、長机に3人が並んで座っている状態を想像してみる。机の上に区切りはない。一人ひとりが机の上に私物を広げると、隣の人のモノと自分のモノが混ざって自分のモノがすぐに判別できなくなる。長机の上には仕切りや線といった他人と自分のスペースを区別する境界がないからだ。境界が全くないわけではないが、各人の頭の中でここからここまでは自分のスペースだとなんとなく意識しているだけだ。境界がない状態で自分のモノを机の上に並べ始めると、他人との境界付近に置いたモノはどうしても他人のスペースに入ってしまったり、逆に他人のモノがこちらのスペースに入ってきたりしてしまう。結果として、明確な境界を設けていない机の上を他人と共有するとモノが散らかることになる。

自分と他人のモノが混ざってしまうのを防ぐには布を使うといい。布は手芸店で買ってきた薄手のものでいい。布の色は机の色とはっきり区別できる色がいい。机と同系色の茶色などは机の色と混ざって境界効果が出ないからだ。この布を適当な大きさに折りたたんで机の上に広げる。どの程度の大きさに折りたたむかは、どれくらい机の上のスペースを自分が使えるかによる。広くスペースを使えるのなら布は大きめに折って敷き、狭いスペースしか使えないのなら小さめに折った布を敷く。大きめの布を買っておけば、どんなスペースの机にも使えて融通が利く。

布を机の上に敷くと、自分と他人の境界をはっきり目で見える形で示すことができる。布の上は自分のスペース、それ以外は他人のスペースということになる。自分のモノは布の上に置き、他人のモノは布の上に置かせないようにすれば、自分のモノと他人のモノが混ざって乱雑になってしまうことがない。布には「境界性」があるのだ。

布の効果はモノの乱雑防止だけではない。忘れものの防止にもなる。自分のモノはすべて布の上だけに置くというルールを徹底していれば、自分のモノは全て布の上に置かれていることになる。布の上に置かれているモノを全て持ち帰るよう気を付けていれば、机の上に何か置き忘れてしまうミスを防げる。布の上に注意を集中できるので、忘れものをする危険を大きく減らせるのである。布には「集中性」があるのだ。

このように、布には自分と他人のスペースをはっきり区切る「境界性」、自分のスペースに注意を集中できる「集中性」がある。他人とスペースを共有する可能性のある場所、たとえば、地区の話し合いで公民館に行くとき、学校行事に参加するとき、または何らかの災害のときに避難所で寝泊まりせざるを得ないとき。こういったときに備えて布を1枚持っていると便利である。室内で使うときには「布」、屋外で使うときには「ブルーシート」という風に、使う場面によって材質を変えるとよい。